警棒は、一般的に腕の長さまたはそれ未満の長さで、武器または護身用具・逮捕具として使用される棒です。かつては木製の物が主流でしたが、現在では金属製や強化プラスチック製、硬質ゴム製のものも使用されています。単純な棒状ではなくトンファー型の物や伸縮式の特殊警棒も存在します。警察官が使うことが多いため、警棒を交差させた形を図案化させた×印が、交番や警察署をあらわす地図記号として用いられています。

日本における警棒の扱い

その機能・用法上、警察官や警備員が警棒を携帯していることがほとんどです。基本的には殺傷力の低い護身用具として使われていますが、扱いようによっては相手を死傷させかねない、れっきとした武器ともなります。日本では、警棒の購入や所有には法的規則はありませんが、みだりに携帯すると軽犯罪法違反などとされる場合があり、十分な注意が必要です。なお、警察官や警備員の警棒操典では、使用に際しては過剰防衛にならないよう首から下の部分を、殴るのではなく叩く・打つなど、相手に与える打撃は制圧のための必要最低限とする事が指導されています。警察官の用いる警棒については、2006年11月から規格が変更され、従来のものより12センチ長い65センチになり、強度も改良されました。パトロールなどの際、相手が警察官に抵抗するケースが近年増加し、凶器を持つ相手に向かい合う場合も多く、一線の警察官から「短くて相手との間合いが取りにくい」などと警棒の改良を求める声が出ていたためでした。新しい警棒は従来と同じアルミ合金製の伸縮式で鍔付きです。グリップの材質を改良するなどし、振った時にすべり落ちにくくなりました。全体的に太くなって強度が増したそうです。また持ち手側に、窓を割って突入する際に用いる、王冠状のグリップエンド「ガラスクラッシャー」を取り付けているものもあります。警備員が用いる警棒についても、他の護身用具とともに見直しがなされた結果、「長さ30センチメートル超90センチメートル以下、その長さに応じて定められた重さ(10センチごとに最大重量が定められており、最大で460グラム)以下の円棒で、鋭利な部分がない物」に規格が変更されました。

練習用の警棒

警察や警備会社で警棒の実践的な練習を安全に行うことができるように「ソフト警棒」と呼ばれる物が製造販売されています。これは棒にクッション材を巻き、布カバーを被せたものです。なお、完全に同一ではありませんが、類似のものがスポーツチャンバラの試合や練習で用いられています。

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使用者による違い

機動隊が使う場合

機動隊などが装備する長い棒は警杖と呼ばれ、警棒とは区別されています。また、警杖は武器・護身用具・捕具として以外にも、犯罪捜査の際に遺留品を探すために藪を掻き分けたり、応急処置の担架の芯としても利用されるなど、広い用途で使われています。全長は90cm・120cm・180cmの3種類が存在します。最近では警備員の携帯できる護身用具の基準が従来より緩和され、一定の条件のもとで民間警備会社の警備員も警戒杖という名称で警杖を携帯できるようになりました。

警察官が使う場合

警察官が警棒・警杖を使用する場合は「警察官職務執行法」ならびに「警察官等警棒等使用及び取扱い規範」により定められた規定に則って過剰防衛にならない範囲で使用します。日本の警察官は拳銃を使用することが規定上、非常に困難であるため、犯罪取締りや犯罪捜査の現場では警棒や警杖を持って対処することが非常に多く、拳銃で対応することというのは極めて少なくなっています、一般に拳銃を携行しない場合でも警棒と手錠は着装していることが多いようです。

警備員が使う場合

現在の日本の警備員は、法律上いかなる権限も有しておらず一般人と変わらないため、警戒棒・警戒杖の使用は正当防衛または緊急避難が成立する場合に限られます。また、その携帯については、警備業法第17条の規定に基づき、都道府県公安委員会規則で制限や禁止がなされています。これをわかりやすく言えば、機械警備・施設警備・現金輸送・身辺警護等に従事する場合には、その業務上使用する機会に遭遇する可能性が高いことから携帯が許されるのに対し、交通誘導や、雑踏警備に従事する場合には、ごくわずかの例外を除いて使用する機会はなく、その必要性も極めて低いことから携帯してはならないということです。

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アメリカにおける警棒の扱い

アメリカの場合は、警棒の携帯に許可証が要る州がいくつか存在します。カリフォルニア州も、警察官以外の警棒所持携帯は「警棒所持許可証を持った職務中の警備員」のみに許されています。つまり、警棒携帯許可証を所持していても勤務外の携帯は違法にあたり、逆に勤務中であっても警棒携帯許可証がなければ違法となるということです。販売者も罰せられる為、通販業者などもカリフォルニアなど警棒所持を禁止している州へは販売を行いません。以前の許可証は、伸縮警棒・トンファー型・ストレート型で別々の許可証が必要でしたが、現在は一つの許可証でどのタイプの警棒を携帯しても構わないことになりました。ただし、マグライトなどに代表される金属製懐中電灯や野球バット・ゴルフクラブ・タイヤレンチなどの所持・携帯には規制がありません。警棒を使用した場合は、携帯許可の有無に関わらず「殺傷能力のある武器」として、使用の正当性の審議が行われます。無許可で所持・携帯していた場合は、その使用に正当性が認められても無許可携帯に対して罪を問われる可能性があります。逆に、合法に所持・携帯していても使用に不法性(過剰防衛など)を問われることもあります。ネバダ州など、バットやゴルフクラブなどを正当な理由なく持ち歩いたり車載する事を刑法で禁止している州もありますが、単独での違法性を立証するのはかなり難しく、傷害や強盗などの際に付加罪状として加算される程度なのが現状です。

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